ひろしまアニメーションシーズン2022

JOURNAL ジャーナル

2022.07.22 公式レポート

【イソナガアキコの公式レポート】アカデミー プレイベント こうの史代講演会「マンガが描きたくなるお話」

こんにちは。ひろしまアニメーションシーズン2022公式ライターのイソナガアキコです。いよいよ、映画祭の開催まで1ヶ月を切りました! 今回は、7月2日に開催されたプレイベント第2弾、こうの史代講演会「マンガが描きたくなるお話」のレポートをお届けします。

広島を舞台に、2022年8月1日から約1ヶ月にわたって繰り広げられる音楽とメディア芸術(アニメーション、映画、マンガ等)の新しいフェスティバル「第1回ひろしま国際平和文化祭」。その開催記念プレイベントの第二弾は、マンガのお話。広島出身のマンガ家であるこうの史代先生に登壇いただき、参加するみなさんも思わず「マンガが描きたくなるお話」をお聞きしました。

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日 時 7月2日(土)
場 所  JMSアステールプラザ中ホール
出 演 こうの史代
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ひろフェス 開幕直前! 第2弾プレイベント開催


会場は4月に開催された第1弾プレイベントと同じ、JMSアステールプラザ中ホール。前回はひろしまミュージックセッションのプログラムも同会場で一緒に催されましたが、今回は広島市中心街など、複数会場で様々な催しが同時開催されました。JMSアステールプラザでは、ひろしまアニメーションシーズンが企画した講演会を単独開催。13時の開場を前に、ホール前にはいい席を確保しようとお客さんの行列ができており、地元出身のこうの先生の人気がうかがえます。

13時30分。いよいよ講演開始。舞台にオレンジ色のワンピースを着たこうの史代先生が笑顔で登場。「かれこれ40年くらいマンガを描いていますが、今もマンガを描くことが大好きです」と挨拶し、講演はスタートしました。

おもむろに演台の前に座ると、紙を広げてなにやら描き始めたこうの先生。その手元は舞台上のスライドに映し出され、それを皆がじっと見守ります。描かれたのは、今日の講演の題目と「暑い中、ようこそ!!」という吹き出し付きの可愛いイラスト。なんとスライド資料はライブで手描きしていくスタイルのようです。これには観客もびっくり。

こうの先生の作品を思い浮かべたとき、その登場人物はどこかのほほんとした雰囲気をまとった愛らしいキャラクターが多く、またしっかりと丹念に描き込まれた背景や、作品の中に自然に混じっている素朴な手書き文字が印象的だったのですが、映し出された文字やイラストがそんなイメージ通りで「あ、こうの先生の絵だ!文字だ!」となんだか感動してしまいました。

マンガを愛する人に届けたい話

ちょっとしたサプライズで始まった講演は、「マンガのいいところ」「マンガに向いている人」「マンガの要素」の3つの題目をもとに進められました。「マンガのいいところ」は、こうの先生曰く「マンガを描くのはお金がかからなくて安上がり」で、「自分の学校生活や家庭環境、失敗談さえネタにできるのがいいところ」なのだそう。

「私は嫌な体験をマンガにして、マンガの中で憂さを晴らしたこともある」と告白し、観客の笑いを誘いながら、「何を描くかでその作品の人気や値打ちは決まる」という、かつてこうの先生が編集者から言われたという言葉も紹介。「『どう描くか』の方が大事だと思いがちだが、『何を伝えたいか』がはっきりしていないとどう伝えるかも考えられない」と話しました。確かに、それは、マンガに限らずアニメーションや絵画、文章などにもいえることで、創作活動をする者にとって、とても大切な視点なのではないかと感じました。

また「マンガに向いている人」については、「国語が得意な人と、絵が好きな人」だという持論も展開。こうの先生といえば『夕凪の街 桜の国』や『この世界の片隅に』を描いたときに、膨大な数の資料を長い時間をかけて読み込んだことがよく知られていますが、創作のために資料を読み解いたり、セリフを組み立てるのに国語力は欠かせないという話は、こうの先生だからこその説得力がありました。

そして後半は、事前に配られていたレジュメに掲載されたこうの先生のマンガ『ヒジヤマさんの耳』を作者自ら読み解く形で、イラストの構図やコマ割りの工夫、セリフのコツなどかなり具体的な技法に踏み込んだお話になりました。この講演を「マンガ家を目指す人」「マンガを描いたことはないけれど、マンガ家の仕事に興味のある人」さらには「幅広くマンガを愛するみなさん」に聞いてほしいと話していたこうの先生。その言葉通り実践的で聞き応えのあるお話で、熱心にメモを取っている人の姿もたくさん見られました。

講演を終えて


講演を終えたこうの先生に少しお話を聞くことができました。
「私がマンガを描き始めた頃は親にも反対されたし、マンガの地位の低さを感じていました。でも時代が変わってマンガが市民権を得たのは嬉しいこと。最近はスマホで読むマンガなどもあって色々な意見もありますが、どんな形でもマンガを読むこと、描くことにたくさんの人が親しんでもらえたらいいなと思うし、今回の講演が、誰かにとって『マンガを描きたい』と思うきっかけになったら嬉しいですね」と笑顔で答えてくれました。

実際過去には、こうの先生の講義をきっかけにマンガ家としてデビューした人がいるそうで、そのことは今でもこうの先生の自慢なんだそう。会場にはこうの先生が客員教授を務める比治山大学短期大学部美術科の学生の姿も多く見られました。参加した学生の中から将来、アニメーション作家やマンガ家となって活躍する人が出てくるかもしれませんね。

「ひろしまアニメーションシーズン2022」開幕までカウントダウン開始!


「ひろしまアニメーションシーズン2022」のトレイラー

講演終了後は、8月17日から21日の5日間に渡って開催されるひろしまアニメーションシーズン2022の告知、そしてそのトレイラー(予告映像)が初お披露目されました。このトレイラーは、本映画祭のアーティスティック・ディレクターの山村浩二さん・宮﨑しずかさんをはじめ、コンペティション選考委員・審査員2名、H-AIRひろしまアーティスト・イン・レジデンス招へい作家3名の計7名がリレー形式で作成したもの。
ほかにも、アジアおよび太平洋に面した国・地域で製作された作品を対象にした「環太平洋・アジアコンペティション」の審査員も発表になるなど、続々と解禁される情報を前に「いよいよ開催が迫ってきたのだな」と胸が高鳴りました。
公式サイトの「プログラム」でも、期間中の特別上映スケジュールや、広島市内各所で上映される関連プログラムも随時公開されていますのでこちらをぜひチェックしてくださいね。


 取材・文・写真