【イソナガアキコの公式レポート】ひろしまアニメーションサロン②「ひろしまアニメーションシーズン2022の楽しみ方」
こんにちは。ひろしまアニメーションシーズン2022公式ライターのイソナガアキコです。
今回は7月30日(土)に開催された、2回目となるひろしまアニメーションサロンのレポートをお届けします。
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日 時 7月30日(土)19:00〜
場 所 広島T-SITE 広島 蔦屋書店 2号館2F
出 演 藤井尚子(フリーアナウンサー)
土居伸彰(プロデューサー)
山村浩二さん(アーティスティック・ディレクター)
宮﨑しずか(アーティスティック・ディレクター)
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ひろしまアニメーションシーズンって何だ?
ひろしまアニメーションシーズン 2022の全貌がいよいよ明らかとなる中、プロデューサーの土居伸彰さん(オンライン参加)、アーティスティック・ディレクターの山村浩二さん(オンライン参加)と宮﨑しずかさんの3人がそれぞれに見どころやこれまでの活動についてプレゼンするという今回のサロン。後半は映画関連の仕事に多く携わるフリーアナウンサーの藤井尚子さんも交えてのフリーディスカッションもあり、大いに盛り上がりました。
トップバッターはプロデューサーの土居さんです。
土居さんは、新千歳空港国際アニメーション映画祭のディレクター職を2021年度で辞任し、2022年にひろしまアニメーションシーズン のプロデューサーに就任。アーティスティック・ディレクターの山村浩二さん、宮﨑しずかさんとともに、新しい映画祭の立ち上げに全力で取り組んできました。
プレゼンではまず、新しく誕生するひろしまアニメーションシーズン2022について、そもそもどんなイベントなのかというベーシックな部分の説明と、特徴的なコンペティションの構成について、また7月に入って続々と公開された特別上映やイベントについて説明しました。
さらに、コンペティションについては、世界86の国・地域から2149作品の応募があったこと、その中の入選した54作品が今回の映画祭で上映されることに触れながら、気になるグランプリについては、「環太平洋・アジアコンペティション」と「ワールド・コンペティション」内の5つのカテゴリの審査員のほか、広島市民や専門家によって構成される複数の特別審査員団や観客による投票などで決めた計33の受賞作品の中から、アーティスティック・ディレクターの山村さんと宮﨑さんによって決定されると発表されました。
そしてプログラムについての説明もあったのですが、ここでは詳細をプログラムから補足しつつご紹介します。
特別上映
「水」「社会」「音楽」「現代日本」という4つのテーマで選ばれた作品を上映。
※注目は8月19日(金)に上映される『名付けようのない踊り』。俳優としても活躍するダンサー田中泯さんの「ドキュメンタリー的フィクション映画」ですが、この中で泯さんの少年時代のアニメーションを山村浩二さんが担当されたご縁もあり、今回の映画祭で上映されます。田中泯さん、山村浩二さんに加え、監督の犬童一心さんもご来場。8月20日(土)には田中泯さんと山村浩二さんのトークショー(無料)も行われます。関連企画
広島市内にある映画館「横川シネマ」と「サロンシネマ」では、劇場設備を使った爆音上映「boidsound」で名作アニメーションの数々が上映されます。
※サロンシネマでは8月15日(月)と17日(水)、『AKIRA デジタルリマスター版』が上映。17日の上映前には、鉄雄役の佐々木望さんのトークショーも。展示(入場無料)
JMSアステールプラザ内、入場無料の展示コーナーでは、5月から広島に滞在して制作活動をしているひろしまアーティスト・イン・レジデンスの3人のアーティストの成果報告を含む「アカデミー成果報告展」や、人気のTVアニメ『平家物語』の背景美術展を開催。
またギャラリーGではワールドコンペティションの審査員を務める馬定延さんがキュレーションした展示「In the Flow」も開催。現代アートファンにオススメです。
家族で楽しめるマルシェやワークショップ「パラレリウムパーク」(入場無料)
JMSアステールプラザ2Fで開催される広島のお店や作家さんのマルシェ。Sukima.のおもちゃで遊べるコーナーや、オリジナルグッズが作れる工作ワークショップも(500〜3,000円)あります。(https://censa.jp/c/animationseason/)また、VRアニメーションを体感できる「講談社VRラボ特別展示」(予約可)が2Fと5Fの両方で開催されます。
アニメーションとひろしま
広島出身で現在アニメーション業界の第一線にて活躍する方々をフィーチャー。
8月17日(水)18日(木)には声優の佐々木望さんをお迎えした上映プログラムとトークを開催。
チケットが必要なプログラムと入場無料のプログラムがあるので、公式サイトで詳細はチェックしてくださいね。なお前売り券は『チケットぴあ』と『エディオン本店東館9Fプレイガイド』で購入できるそう。(当日券はJMSアステールプラザ、横川シネマ、広島市映像文化ライブラリーにて販売)
世界の優れたアニメーションの世界に触れられる2年に1度のまたとないチャンスなので、ぜひお見逃しのないように!!
→チケットの購入について
広島とアニメーションの歴史について〜広島アニメーション・ログ
熱のこもった土居さんのプレゼンの次に登場したのはアーティスティック・ディレクターの山村浩二さん。
広島で過去開催されていたアニメーション映画祭の思い出など話しながら、広島とアニメーションの歴史とその関係を解説しました。
実は、1985年に広島で開催されたアニメーション映画祭を観るために、当時大学2年生だった山村さんは初めて広島の地を訪れたそう。その頃、すでにアニメーション制作を始めていたそうですが、その映画祭の審査員の一人だったイシュ・パテルさんの特集を大きいスクリーンで観たことが、その後、アニメーション作家として山村さんが活躍するに至る大きな転機となったのだといいます。
山村さん自身、その後、広島で開催される映画祭で数々の作品が受賞し、また他にも多くの作家が広島で開催されたアニメーション映画祭で才能を開花させたこと、そしてそうした作家たちが今回のひろしまアニメーションシーズンのコンペティションにも多数参加していることに触れ、世界にどんなアニメーション作家や監督がいるのかということを知ることで、アニメーションや映画祭により興味を感じてもらえるのではないかという想いを語りました。
過去に広島で行われたアニメーション映画祭に何度も訪れたことがあるという藤井さん
実は藤井さんも、広島で開催されたアニメーション映画祭に司会者として何度か参加したことがあるそうで、
「山村さんの作品もそこで観させていただいたし、世界トップクラスの作品が広島の地に集結するという感動、そして若手の作家たちが「なんとしても自分の作品を売り込みたい」と必死になっている、そんな熱気に満ち溢れた空間が大好きでした」と当時の様子について興奮気味に語りました。
今回のひろしまアニメーションシーズン2022においても、そのような熱気に満ちた空間が生まれ、もしかしたらその中から次世代のスターが誕生するかもしれません。山村さんの話を聞きながら、そんな期待感に胸が膨らみ、とてもワクワクしました。
文化のインフラを目指した地元との連携〜アカデミー活動レポート
最後はこの日の司会も務めたアーティスティック・ディレクター宮﨑しずかさんがアカデミーの活動についてプレゼンしました。
ひろしまアニメーションシーズン2022の企画として最も早く、4月から広島市内各所において実施されてきたアカデミーの活動。内容として一つは、アーティスト・イン・レジデンスで招へいした3人のアーティストたちと地域の人々との交流を目的とするワークショップ。そしてもう一つは、広島市の教育機関とコラボレーションして行う実験的なアニメーション教育があります。
いずれもすぐには結果のでない地道なプロジェクトですが、「広島の文化インフラのプラットフォームになりたい」という高い目標を自ら課して、そのほとんどに立ち会った宮﨑さん。スライドに映し出される写真にはアーティストや参加者の笑顔があふれていて、現場の熱気が伝わってきました。
7月25日(月)にminagartenで行われたワークショップの様子
私も個人的に是恒さくらさんのワークショップに参加したのですが、プロのアーティストと一緒に作品を作る作業は大人はもちろん、子どもにはとても刺激的な体験で、目をキラキラさせて作品づくりに取り組んむ彼らの姿が印象的でした。
ワークショップの成果は、各アーティストたちが15秒間のアニメーション作品を制作して、映画祭の各プログラムの上映の冒頭に流されるのだそう。こちらもぜひお見逃しなく!!
映画祭の楽しみ方&おすすめのプログラムは?
サロンの締めくくりは、藤井さんを交えて、映画祭の楽しみ方についてのお話となりました。
藤井さんから、8月20日(土)に開催される田中泯さんと山村浩二さんのトークショーについて、どんなトークショーになるのかと山村さんに質問が上がりました。
実は田中泯さんのドキュメンタリー映画『名付けようのない踊り』はアニメーションシーズン でも特別上映されますし、泯さんはワールド・コンペティションの「物語の冒険」カテゴリーの審査員もされています。当初はアニメーションを知らないということで戸惑っておられたものの、審査員の経験を機にアニメーションに興味を抱き、トークショーまで引き受けてくれることになったのだそう。どんなトークになるかについては「泯さんのダンスのスタイルと同じで、事前に打ち合わせをせず、ぶっつけ本番になる予定です。その場の流れでそれぞれが考えている、アート、映像、身体表現についての話をしたいと思います」と語ってくれました。
そして最後に藤井さんから、「ひろしま国際平和文化祭でひろしまアニメーションシーズンや、ひろしまミュージックセッションが生まれ、長年続く広島国際映画祭もある。山村さんもそうだし、藤井道人監督など、世界的レベルで作品を発信する方が広島からたくさん生まれているし、『ドライブ・マイ・カー』も撮影された。この関係性を切らずにずっと広島でやっていけたらいいですよね」と呼びかけると、土居さんも「本当にその通りで、2回目、3回目と続けてやっていくことが大事だと思っている」と頷きました。
「ひろしまアニメーションシーズン に参加してくれた方々には、広島の様々な場所に訪れて、作品と広島の街をフォーカス的に楽しんでもらいたい。やはり文化を楽しめることこそが平和である象徴だと思うので、アニメーションがあることによって広島の文化の豊かさをつくる、そういうところで貢献したいなと思っています」と述べて、このサロンを締めくくりました。
皆さんのプレゼンを通じて、広島でこれまで紡がれてきたアニメーションの歴史、そしてそれによって深められた関係性がよくわかったと同時に、新しく立ち上がる映画祭として、チャレンジングな企画に取り組んでこられた関係者の皆さんが本当に頼もしく、また広島の誇りであると思えたサロンでした。
この後のレポートはいよいよ8月17日から始まる本番のレポートになります。
胸の高鳴りを抑えながら、その日を楽しみ待ちたいと思います。
取材・文・写真