ひろしまアニメーションシーズン2022

JOURNAL ジャーナル

2022.08.19 公式レポート

【イソナガアキコの公式レポート】ひろしまアニメーションシーズン2022 デイリーレポート② 2022.8.18

こんにちは。ひろしまアニメーションシーズン2022公式ライターのイソナガアキコです。
2日目となる18日(木)は、ちょっと早めの朝10時前に会場入りしました。というのも、早々からコンペティション来場者やゴールデンカープスターを受賞した水尻自子さんの作品の上映&トークなど、注目コンテンツが目白押しだったのです。会場付近も昨日よりも多くの人が集まっていて、足早に大ホールや中ホールへと駆け上がっていく姿を見かけました。

映画祭を影で支えるのは…


インフォメーションはこの日も相変わらず忙しそう!昨日の開会式に間に合わなかったコンペ入選者や来場者たちの様々な問い合わせや相談に追われていました。中には「スーツケースがロストしてしまったので服をどこで買ったらいいか」なんて相談も。「とにかく広島で快適な1日を過ごして欲しい」と、どんな声にも一生懸命応える事務局のスタッフがこの映画祭を支える大きな力になっているのは間違いありません。

上の写真はワールドコンペティション「寓話の現在」に入選したAnastasiia Falileievaさんと、事務局で広報と海外の作家さんの来日管理を担当するアシスタント・プロデューサーの栗田さん。無事来日できたことを抱き合って喜ぶ二人の姿がとても微笑ましく、キュートでした。

大盛況!受賞者・来場者トーク


この日、朝10時からスタートした一つめのプログラムは、コンペティション来場者トーク。
アーティスティック・ディレクターの山村浩二さんが司会を担当。作品の背景や制作過程についての話を聞き出しながら、それぞれの作品の魅力に迫りました。写真でマイクを持つのは環太平洋・アジアコンペティションで入選した台湾の監督Liang-Hsin Huangさん。


続いてゴールデン・カープスターを受賞した水尻自子さんの作品の特集上映をする中ホールへ。
水尻さんの大学卒業制作作品『かっぽ』から、カンヌ国際映画祭でコンペ入選した最新作『不安な体』までの7作品を鑑賞した後、水尻さんのトークショー会場へ移動。こちらのトークショーも用意した椅子が足らなくなるほどの人気ぶりでした。


大学の卒業制作を指導してくれた先生の言葉をヒントに「感触的なアニメーション表現を映像作品として成立させる方法を見つける」という課題を自分に課し、作品制作に取り組んだといいます。最新作の『不安な体』に至るまでの試行錯誤やその過程での葛藤を率直な言葉で語った水尻さん。その一言一句聞き漏らすまいと、多くの人がメモを取りながら耳を澄ましていました。


トーク終了後、水尻さんのもとには、少しだけでもお話ししたいと行列をつくる、アニメーション作家を志す若者たちの姿がありました。世界で活躍するトップクラスの作家(監督)と直接コンタクトできるのも、こうした映画祭の醍醐味の一つ。憧れの監督を前に、目を輝かせて話をする彼女たちの姿が印象的でした。

作品の核心に触れ、新しい視点を拓く


午後からは、アーティスティック・ディレクターの山村さんによる「アニメーションにおける水:流動と断絶」のレクチャーへ。
第1回となる今回のひろしまアニメーションシーズンのテーマは「水」。「水」はアニメーションと相性が良く、挑戦しがいのあるテーマだと話す山村さん自身、キャリアの早いうちから意識的、もしくは無意識的に水をテーマにした作品を多く制作してきたのだといいます。

山村さんが大学の卒業制作で自己と外界をつなぐ媒介としての水をイメージして制作したという『水棲』をはじめ、『水準原点』『椅子の上の男』『かつて海があった…』など水がテーマに含まれる名作を、山村さんのレクチャー付きで視聴。様々な気づきを与えてもらいながら、作品の核心部に迫る贅沢なプログラム。作品のより深いところを理解しながら鑑賞するという体験がすごく面白いと感じました。他の作品も山村さんの解説付きで鑑賞してみたい!と思いました。

3人のH-AIRアーティストが揃って成果報告


続いては、H-AIR(ひろしまアーティスト・イン・レジデンス)の成果報告プログラム。是恒さくらさん、ナタ・メトルークさん、マフブーベフ・カライさんの3人が、滞在してから今日までの2〜3ヶ月間行って来たワークショップや作品制作についてトークしました。

広島市西部の皆賀というエリアに滞在している是恒さんは、滞在当初から近くを流れる川辺のリサーチを開始。地域の方達との交流を深めながら川にまつわる郷土の歴史に強く関心を持つようになったと語ってくれました。
また滞在する施設の天井の低さに驚き、「私は自分の背が高いということを知らなかった」というテーマでサブプロジェクトの作品制作を始めたと語ったのはナタ・メトルークさん。
そして日本と日本の文化、とりわけ日本の文字が大好きだというマフブーベフ・カライさんは日本での経験の全てが作品のインスピレーションになっていると情熱的に語りました。
滞在する地域や関わる人々から得た様ざまなインスピレーションを、3人3様作品制作に生かそうとしている様子が、トークからはひしひしと伝わって来ました。


滞在場所がバラバラのため日常的に交流する機会があるわけではないものの、会えばこの通り仲の良い3人。この報告会の司会も務めたアーティスティック・ディレクターの宮﨑しずかさん(写真左)は、「初めての試みで迷惑をかけることも多かったが、全てに臨機応変に対応してくれたこの3人に心から感謝を伝えたい」と笑顔で3人を称えました。

地域と連携 ①横川シネマ


この日は、映画祭の連携会場のひとつとなっている「横川シネマ」も訪問しました。
JRの広島駅からひと駅の横川駅近く。昔ながらの商店街の一角にあるミニシアターです。
期間中は、近年公開された海外の名作アニメーションが、迫力ある音響の「boidsound」で特別上映されるほか、ワールドコンペティションも上映されます。


17日のワールドコンペティションの上映では70席全てが埋まり、急遽、簡易の椅子を出して対応したそう。


受付、編成、上映、清掃まで、一人でこなす溝口徹支配人。アニメーションについても詳しく、ひろしまアニメーションシーズンのプロデューサー土居さんの会社ニューディアーが配給する作品や、土居さんの著作はほとんど読んでいると教えてくれました。

広島発の国際アニメーション映画祭として地域の方々の協力や支援のもと開催されているひろしまアニメーションシーズン2022。明日以降、同じく連携プログラムの会場となっているサロンシネマや広島市映像文化ライブラリーにも訪れてみたいと思います。

さて明日はいよいよ折り返しの3日目。2日目に負けじとこの日も注目プログラムが続々登場します。鋭意レポートをお届けしますのでどうぞお楽しみに!


 取材・文・写真