ひろしまアニメーションシーズン2022

PROGRAMプログラム

ゴールデンカープスター:環太平洋・アジアの達成

アニメーション映画『犬王』生演奏付き ”狂騒”応援上映 ゲスト:大友良英、後藤幸浩
SCREENING TALK

スケジュール

8.20 Sat. 15:10~ @大ホール

プログラム概要

【サイエンスSARU ゴールデン・カープスター受賞記念!】
アニメーション界における今年最大の話題作のひとつ『犬王』。5月の公開以来、ファンを熱狂の渦に巻き込み続けている本作を、犬王と友魚によって繰り広げられる白熱のライブシーンを共に楽しみ応援する「”狂騒“応援上映」にて特別上映! 上映前には、音楽を担当した大友良英と、琵琶監修を担当した後藤幸浩によるトーク&特別音楽セッションも!

司会:土居伸彰(本映画祭プロデューサー)

*”狂騒“応援上映は、犬王と友魚によって繰り広げられる白熱のライブシーンを共に楽しみ応援する上映です。
各種扇子・うちわ等の応援グッズ、サイリウム・ペンライト等の光り物の持ち込みが可能です。

作品概要

異形の能楽師・犬王と、盲目の琵琶法師・友魚。室町時代の都で出会った二人の若者が、伝統芸能の常識をぶち破るパフォーマンスを次々と披露し、新時代のポップスターとして民衆を熱狂させた――。謎に包まれた実在の能楽師・犬王をモデルに、大胆な解釈でストーリーを紡いだ古川日出男の小説「平家物語 犬王の巻」。その物語を、アニメーション界の湯浅政明がさらに大胆不敵なイマジネーションを駆使して映像化したのが、この『犬王』である。ヒップホップもロックも、狂熱の野外フェスも大仕掛け満載の観客参加型ミュージカルも、すべて14世紀日本に存在していた!?
 室町時代のバディムービーというかつてない題材に挑んだのは、TVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」や映画『罪の声』など、数々の話題作を手がける脚本家・野木亜紀子。キャラクター原案をつとめたのは、原作の表紙イラストも手がけた漫画家・松本大洋。彼の代表作「ピンポン」は、かつて湯浅監督がTVアニメ化しており、片やスポーツ、片や芸能に打ち込む若者の青春と友情のドラマとしても相通じるものがある。さらに、実力派アニメーターたちが集結し、パワフルかつアーティスティックな作画表現を全編にわたって繰り広げている。そして、時代やジャンルを超越したボーダレスな音楽を手がけたのは、大友良英。古典楽器の音色が現代のロックンロールやオーケストラサウンドに早変わりする自由自在な音楽設計は、ミュージシャンとして、映画音楽家としての圧倒的力量と多様性を誇る大友ならではの技である。
 天井知らずのカリスマ性と歌唱力、そして野心を抱く主人公・犬王のキャラクターに、声優としてリアルな実在感をもたらしたのは、人気バンド「女王蜂」のボーカル担当・アヴちゃん。その相棒となる琵琶法師・友魚を演じるのは、幼いころからダンスを学び、ミュージカル出演経験も多い実力派俳優・森山未來。両者が実際にステージで鍛え上げてきたパフォーマンス力もまた、本作に強靭な生命力を吹き込んでいる。柄本佑、松重豊、津田健次郎ほか、脇を固める魅力的な顔ぶれも見逃せない。
2021年、ヴェネチア国際映画祭では“日本の長編2Dアニメーション”として初のオリゾンティ・コンペティション部門に選出され、”ロックオペラ“として呼び声高い本作。トロント国際映画祭、釜山国際映画祭、東京国際映画祭に続いて、2022年3月には水木しげる展・藤本タツキ展などと並び、日本映画としては初めてアングレーム国際漫画祭で上映と展示を迎える。
 痛快無比なサクセスストーリーにして、切ない諸行無常の物語は、原作にはないエピローグによって、現代に生きる我々にもリンクする友情の物語となった。前代未聞のミュージカル・アニメーションが、いま誕生する。

上映作品一覧

『犬王』
湯浅政明
日本

室町時代。かつて戦に敗れた平家の骸と遺物が今も海中に眠る壇ノ浦に、ひとりの少年が暮らしていた。名を、五百の友魚(イオノトモナ)という。ある日、友魚とその父親は、都から来た連中に乞われ、平家と共に海に没したという「剣」――皇位の証である「三種の神器」のひとつ――を探しに海へ漕ぎ出す。しかし、友魚の父はその剣に宿る呪いを浴びて命を落とし、友魚は両目の視力を失ってしまう。

 無念を叫ぶ父の亡霊と母に背中を押されるように、友魚はひとり、都へ向かう。その途上、彼は琵琶法師・谷一(たにいち)に出会い、弟子となった。都にたどり着いた友魚は、谷一が属する覚一の座に迎えられ「友一」(ともいち)の名を与えられる。しかし、新しい名を受け入れて座に入るべきか悩み、再び旅支度をして一人夜の都を彷徨う。
 都には、またひとり別の少年がいた。父親は猿楽能の一派、比叡座の棟梁。犬のように屋外に放り出されて育った少年は、しかし能楽師の才能はしっかりと受け継いでいた。見よう見まねで能を学び、その特異な体つきを活かして人とは違う舞を舞った。瓢箪の面をかぶり、己の異形が人々の目を引くのをあえて楽しむかのように都大路を駆けた。
 そして、ふたりの少年は出会う。音を奏でる者と舞う者。ぴたりと息の合った彼らは一瞬にして意気投合する。能を舞う少年はのちに自らを「犬王」と名乗った。
そこから、新たな物語が幕を開ける――。

 それぞれに芸の道を歩みながら、従来とは異なる新しいかたちで演ずる彼らのパフォーマンスは、都の民を熱狂させる。友一は友有(ともあり)と名を改め、唯一無二の自由奔放な演奏スタイルと、魂の叫びともいうべき歌声で聴衆を圧倒。犬王は型破りな演目と他の追随を許さない身体表現で人々を魅了し、アーティストとして前人未到の境地に達するたびに、呪いに縛られた彼の体は徐々に変化していった。その人気はやがて保守的な能楽師たちや琵琶法師たちの反感を買うほどに膨らみ、ついには朝廷の耳にまで入るに至る。
 いよいよ、犬王と友有は、将軍・足利義満の前でその芸を披露することになる。二人にとって一世一代のステージ、それは頂点にして、彼らが探し続けた真実と出逢う瞬間でもあった――。

湯浅政明

アニメーション監督。映画『マインド・ゲーム』で2004年に監督デビュー。第8回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞、第59回毎日映画コンクール大藤信郎賞、2005年モントリオール・ファンタジア映画祭 アニメーション部門最優秀賞、監督賞、脚本賞ほか六部門を受賞。映画『夜明け告げるルーのうた』では、アヌシー国際アニメーション映画祭にて最高賞にあたるクリスタル賞を受賞。映画『きみと、波にのれたら』では上海国際映画祭 金爵賞アニメーション最優秀作品賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭長編アニメーション部門最優秀賞を受賞。その他の代表作には「映像研には手を出すな!」「ピンポン THE ANIMATION」、『夜は短し歩けよ乙女』、「DEVILMAN crybaby」「日本沈没2020」などがある。